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freeeの「無視」ボタンを押していませんか。押した記録は残りますが、理由は残りません

freee会計で日々の経理をされている方なら、「自動で経理」の画面を毎日のように開いていると思います。銀行やカードから流れてきた明細が一覧で並んでいて、一件ずつ登録していく、あの画面です。

あの画面には、「無視する」というボタンがあります。

押すと、その明細は一覧から消えます。処理すべき件数が減って、画面がきれいになります。忙しい月末に、あれは本当にありがたいボタンです。

ただ、このボタンには、あまり知られていない性質がひとつあります。

押したという事実はfreeeに残りますが、「なぜ押したのか」はどこにも残りません。


「無視」を押したくなる理由は、だいたい正当です

先に申し上げておきたいのは、「無視」を押すこと自体が悪いわけではないということです。押したくなる場面には、それなりの理由があります。

理由その1:資金移動が二重になるから

普通預金からカード引落の口座へお金を移した。すると、出ていった側と入ってきた側の両方に明細が立ちます。両方から仕訳を切ると二重になるので、片方を消す必要があります。

理由その2:カードの明細と引落の明細がダブって見えるから

カード会社の明細を1件ずつ登録したあと、銀行口座に「カード利用代金」としてまとめた引落が現れます。同じ買い物が2回出てきたように見えるので、片方を消したくなります。

理由その3:古すぎて、もう何だったか分からないから

3年前の口座を連携した瞬間に、過去の明細が数百件流れ込んでくることがあります。一件ずつ調べる時間はない。まとめて消したくなります。

どれも、その場では合理的な判断です。実際、理由その1(口座間の資金移動で重複した片方)は、freee自身が「無視してよい例」として挙げている使い方です。理由その3も、記帳する会計期間より前の日付の明細であれば同じく挙げられています(当期の明細が混ざっているなら別です)。

問題は、判断そのものではありません。


問題は「理由が残らないこと」です

ここは少し丁寧に、分けて書きます。

「無視」を押しても、その明細自体が消えてなくなるわけではありません。 freeeの中には「取引を登録せずに無視した明細」という状態として残ります。

けれど、仕訳は起こりません。freeeのヘルプにも「明細を『無視』することで、会計データとして反映されません」と書かれています。つまり、そのお金の動きは帳簿には載らないということです。

そして、明細に残るのは「無視した」という事実だけです。

  • なぜ押したのか
  • 本当に処理済みだったのか、それとも面倒だったのか

これらを書き残す欄は、見当たりません。(仕訳がないので帳簿にも残りません)

そうすると、半年後にこういうことが起きます。決算のときに預金残高が合わない。原因を探すと、無視された明細が出てくる。当時の担当者はもういない。「これは処理済みだから消したのか、単に飛ばしたのか」が、誰にも分からない。

そして、もうひとつ。これは言いにくいことですが、書いておきます。

理由を書かずに帳簿へ載せずに済ませられる操作は、意図的に使われたときに見つかりにくくなります。 誰も見返す習慣がなければ、気づく人はいません。

見返す手段そのものは、ちゃんと用意されています。freeeの[会計帳簿]→[明細の一覧]で、種別を 「無視のみ」 に切り替えると、無視した明細だけを一覧できます。無視の取消もできます。方法が無いのではなく、見る習慣が無いだけ、というのが実際のところだと思います。

私たちは、経理をお預かりしている立場として、担当者を疑いたくないからこそ、疑わなくて済む仕組みにしておくべきだと考えています。理由が残る運用にしておけば、そもそも疑う場面が生まれません。


だからタクセルでは、記帳している期間の明細を無視しません

私たちがクライアントの経理をお預かりするときの運用は、こうしています。

まず、切り分けておきたいことがあります。

freeeのヘルプが「無視してよい例」として挙げているのは、記帳する会計期間より前の日付の明細と、同期している口座間で資金移動したときに重複する片方の2つです。

このうち前者、つまり記帳の対象にしていない期間の明細は、私たちも無視します。 口座を連携した瞬間に何年も前の明細が流れ込んでくることがありますが、それらはそもそも記帳する対象ではありません。 無視するのが正しい使い方です。

私たちが使わないのは、記帳している期間の明細です。 資金移動で重複した片方を無視する方法は、freeeでも正しい使い方とされていますが、タクセルではこれも無視しません。 理由は2つあります。

理由1:無視を「目立つもの」にしておくため

日常的に無視を使っていると、無視は風景になります。そうなると、本当に問題のある無視が紛れ込んでも誰も気づきません。

記帳している期間では一切使わないと決めておけば、その期間の無視が1件でもあれば「間違っているか、何かがおかしい」というサインになります。 例外は、例外のままにしておかないと機能しません。

理由2:「すべての取引は、最後に実際の入出金で決済される」という前提を守るため

実務上は、こちらのほうがずっと大きい理由です。

この前提さえ守られていれば、月次のチェックが軽くなります。

  • 債権債務は、滞留しているものと期日のないものだけを見れば足ります。 決済されるはずのものが決済されていない、という形でしか異常が現れないからです。
  • 手で決済してしまったものがあれば、勘定科目の残高か取引の決済状況にズレとして浮かび上がってきます。 探しに行かなくても、向こうから出てきます。
  • 仕訳承認は、振替伝票を重点的に見れば足ります。 通常の取引は他の月次チェックで担保されているからです。

前提が崩れると、これが全部ひっくり返ります。どこに異常が出るか決まっていないので、あらゆる観点から確認しなければならず、承認に工数がかかります。 そして工数のかかる承認は、たいてい中身を確認せずにボタンを押すことになります。それが一番危ない状態です。

目の前の手間を惜しんで無視を使うと、あとの月次チェックと承認で、その何倍もの手間がかかる。 これが私たちの考え方です。

なお、freeeのヘルプにはこういう注意書きもあります。

なお、プライベートの収支の明細は「無視」の対象にはなりません。

プライベートの明細を無視すると残高にずれが生じる要因となりますので、「プライベートの収支として登録」します。

— freeeヘルプセンター「不要な明細を無視する」(2026年4月16日更新/2026年8月30日閲覧)

つまり「事業に関係ないから無視してよい」ではありません。会社のお金が動いた以上、たとえ事業に関係のない支出であっても、内容に応じた科目を立てて登録する必要があります(法人なら役員貸付金や立替金、個人事業主なら事業主貸といった形です)。「関係ないから消す」が、いちばんやってはいけない使い方です。


単なる「原則」ではなく、実際にそう運用しています

タクセル自身の帳簿でも、直近1年分を確認したかぎり「無視」は一件も使っていません。 資金移動で重複した明細も、すべて取引として登録して消し込んでいます。言っているだけでなく、実際にそうなっているかを自分たちの帳簿でも確かめました。

一方で、これまで見てきた帳簿では、「無視」は思っているより使われています。 1件2件ではなく、まとまった件数が帳簿の外に出ていることもあります。そしてほとんどの場合、判断の理由は残されていません。


同じ構造の「見えない処理」は、ほかにもあります

画面上はきれいなのに、実態は片付いていない。同じ性質のものが、ほかにもあります。

① 連携が止まっている口座 — 連携が止まると明細が入ってこないので、画面は「未処理0件」に見えます。きれいなのではなく、届いていないだけです。口座ごとの最終更新日で分かります。ただし使っていない口座を残しているだけのこともあるので、古い=壊れている、と決めつけずに一覧で確かめるのが要点です。

② 自動で取引を作るルールの積み重なり — 便利な機能ですが、何年も足し続けると証憑のない取引が量産される状態になりがちです。領収書から起こした取引と二重になることもあります。

③ 迷った明細の「とりあえず」処理 — 科目が決まらない明細を、仮払金や雑費に寄せる。役員貸付金でいったん逃がす。一件ずつは小さくても、積み上がると中身が読めない残高になります。


気になったら、一度ご相談ください

「無視」はそのひとつにすぎません。理由が残らないまま帳簿が動く操作は、freeeの中にいくつもあります。

たとえば、未決済の取引を実際の入出金と突き合わせずに手で消し込んでしまうやり方。売掛金が消えて画面上は片付きますが、入っていないお金を「入った」ことにできてしまいます。 回収できていない売掛金が見えなくなり、資金繰りの判断を誤ります。

タクセルは公認会計士が運営している経理代行の会社です。こうした「見えなくなっている処理」が御社の帳簿にどれくらいあるかを、外から確認してお返しすることができます。 ご希望の会社さまには無償で実施しています(先着5社さま・2026年10月末までのお申し込みを目安にしています)。

拝見するのはfreeeの参照権限だけで、書き込みは一切しません。

ひとつだけ先にお伝えしておくと、不正があったかどうかまでは分かりません。 分かるのは「確認したほうがよい処理がどれくらいあるか」までで、見つかったものがすべて問題というわけでもありません。そのうえで何をどう直すかは、御社で決めていただいて構いません。

該当が無ければ、それはそれで「きちんと運用できている」という確認になります。

詳しくは、この記事の最後にあるお問い合わせ先からご連絡ください。


おわりに

「無視」ボタンは、悪い機能ではありません。freee自身が用途と注意点を示したうえで用意しているもので、正しく使えば手間を減らしてくれます。

ただ、押した記録は残るのに、押した理由は残りません。 そして同じように、理由が残らないまま帳簿が動く操作は、freeeの中にいくつもあります。

どれがどれだけ使われているかを、一度だけでも把握しておく価値はあると考えています。該当が無ければ、それが確認になります。

「うちの記帳ルールはこれで大丈夫か」「月次のチェックが重いのを何とかしたい」——そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。タクセルは、貴社のフェーズに合わせてご提案します。

サービスのお問い合わせはコチラ
電話:050-3174-4946

この記事の著者

松村康平

代表取締役

大手監査法人で法定監査、管理業務コンサルを経験。IPO準備会社の経理課長という立場で上場準備、決算、税務、事業計画、予算管理、上場準備、MA対応、会計システム導入、ペーパレス化の推進を担当。

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