初心者向け|経理担当者のIPOの教科書①【上場とは?基礎知識と影響編】
意味や与える影響を、きちんと理解できている人が少ない「IPO」。経理担当にとっては必須の知識。なんとなく理解したつもりの方も少なくないのでは?実は、仕事内容やキャリアに大きく影響します。
本記事「IPOの教科書シリーズ」では、経理パーソンとして正しく理解しておくべき「IPOのいろは」を数回にわたり解説!初回は基本をおさえ、
IPOはいったいどんなもので、社員ひとりひとりにどんな影響があるか?
を見ていきましょう。
こんな方にオススメのシリーズです
- ・上場のことがよく分からない・どんな影響があるのか知りたい方
- ・IPOを目指している企業の経理パーソン
- ・経理としてキャリアアップしたい方
目次
基礎:IPOとは
IPOは以下の略語です。
Initial(最初の)
Public(公開)
Offering(売りもの)
証券取引所に株を公開していない企業が、誰でも買い付けができるように公開することです。これを「IPO」「株式上場」「新規公開」などと言います。
これまでは、経営陣など少数の限られたメンバーで会社を所有していたところから、不特定多数の一般投資家が自由に売買できるよう開放します。個人のものから、公のもの (Public) になるということですね。
IPOはものすごく大変!?
IPOには、取引所が行う上場審査をクリアする必要があります。そのためにコストと時間をかけて準備します。収益基盤や内部統制について問われるため、経理業務の役割はとても重要です。膨大な労力や負担が要求されるIPO。もちろんその間も、通常業務がストップするわけではありません。
少し想像するだけでも大変そうなIPO。では、なぜIPOを志すのでしょうか?よく耳にする「IPOを目指しています」「上場準備中です」。この目的や、IPOによる影響を正しく理解することからはじめましょう。
IPOが社員ひとりひとりに与える影響は、意外にも身近です。
IPOのメリットとは
資金を調達しやすくなる
企業は、運営を続けるための経営資金が必要です。IPOをすると、資金を調達する方法を多様化することができます。株式公開をしたことで、一般投資家に株を購入してもらうなど、これまで取れなかった手段が選択肢に加わるためです。多額の調達が可能になり、手法によっては返済や利息の負担も軽減されるため、有効な手法。調達した資金によって、新しい事業へのチャレンジ、人を採用する、など経営を加速させることが可能に。
社員から見たら:会社の資金が潤沢に!人材の充実、事業の加速などに資金を投下しやすくなる影響アリ。
知名度・社会的信用の向上
IPOにおける大きなメリットのひとつは何と言ってもコレ。
厳しい審査を通過する必要があるIPO。そのハードルを越えた企業は「一定水準以上の企業である」と見なされます。上場すること自体が試験であり、合格が信頼になり得るのです。場合によっては、新聞やニュースなどのメディアで取り上げられることも。顧客や取引先からの社会的信用度も向上するでしょう。
社員から見たら:「あの企業に勤めているの?」的な知名度のアップが期待できる。ローンを組みやすくなるなど、実生活への影響も。
優秀な人材を確保
IPOしている企業は、求職者から「安定した安心の就職先企業」として認識されます。上場企業への就職希望者は根強く多数いるのが現状。非上場企業に比べ、優秀な人材が集まりやすく、他社と競合となった場合も、自社を選んでもらえる可能性が高まると言えます。また、新規採用だけでなく既存社員への影響も。士気が高まり、定着・活躍への効果も期待できます。
社員から見たら:会社の採用成功は、自身の業務にも好影響の可能性アリ。
管理体制の強化
IPOでは、会社を公のものにするため、内部の管理体制の構築が求められます。コンプライアンスの遵守、適正な財務報告などの整備です。これにより管理体制が整い、より組織的に業務を遂行する体制に移行していきます。
社員から見たら:会社運営の基盤が整うことで働きやすい環境に。労働環境自体も改善される可能性大。
IPOのデメリットとは
多額のコストがかかる
上場状態を維持するには多額の費用が必要です。
準備段階から審査をクリアするための整備、人員確保、監査報酬が必要になります。上場後も証券会社や監査に費用が必要に。少なく見積もっても年間で数千万円と言われています。ある程度収益を拡大していかないと到底支払えない金額です。
社員から見たら:会社の収益を大量に投下するので、メリットを理解していないと疑問が起きやすいかも…。
買収リスク
IPOは株式を公開し、誰でも購入できる状態にするということです。自社にとって都合の悪い相手に買い占められる「買収」や、転売目的の取引、「投機的取引」の対象になる恐れもあると言えます。
社員から見たら:買収があった場合、経営者が急に変わる可能性アリ。同時に非公開会社のお家騒動的トラブルのリスクが減るという見方もできます。
情報開示が義務に
会社は株主のものです。IPOしたことで自社の株式が流通するようになると、株主・投資家への情報開示を適切に行う義務があります。
決算などの定期的な情報だけではなく、突発的事態にも情報を開示。常に透明性を持って企業運営をしなくてはなりません。
社員から見たら:社内でトラブルが発生した、社会的に大きなニュースがあったときに、経理部門だけでなく他の従業員も対応に追われる可能性アリ。
プレッシャー
では、株主はどんな目的で株を取得するのでしょうか?主に、株式の値上がり益、配当金、株主優待をメリットと考え購入しています。(応援購入など例外あり)会社が成長して利益をもたらしてくれることに期待し、お金を出しているわけです。経営者は、業績向上、株価向上などの、短期的な結果を求められることが多くなると言えるでしょう。
社員から見たら:短期的な成果へのプレッシャーが高まる可能性アリ。会社によっては、「長期的な成果を見込んだチャレンジ」がしにくくなる可能性も。
まとめ
ここまで、メリット/デメリットを並べ、社員ひとりひとりに影響がどういった影響が出るかを解説しました。
ここでは「社員」として解説しましたが、では、「経理担当社員」だとどうでしょう。
IPOは、財務状況をシビアに審査されます。もちろん経理業務でも、業務の進行や目的そのものが変わるので、月次決算の締めをこれまでより早く求められるなど、大きな影響が。
次回記事では、上場企業と未上場経理の違いや、IPO準備において経理担当に求められていることを解説します。
どうぞお楽しみに!
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