上場準備ノウハウの記事

初心者向け|経理担当者のIPOの教科書②【上場準備業務とは?変化と影響編】

前回までのおさらい

 

前回の記事(初心者向け!経理担当者のためのIPOの教科書【上場とは?基礎知識編】)では、IPOの基礎とそれによるメリット・デメリット、社員への影響について解説しました。

資金調達がスムーズになり、事業や人員構成、知名度に好影響がある一方で、膨大なコスト、ルールの増加や経営方針変更の可能性…。多岐に渡る影響をご理解いただけたと思います。

今回は、「経理社員」が求められるIPO準備とは何か?影響はどんなことがあるか?に絞った記事です。IPO準備が始まると、経理社員の業務は一変します。負担の変化や求められることの違い、キャリアやスキルに与える大きな影響も。解説していきます。

こんな人におすすめ

  • ・上場まわりの経理業務とは何か知りたい方
  • ・IPOを目指している企業の経理パーソン
  • ・経理としてキャリアアップしたい方

IPOで経理業務が激変する

 

まずは、IPO前と後で、業務内容がどのように変化するのか見ていきましょう。

未上場の経理

まず、大きく違うのは、経理に対するスタンスです。企業によってばらつきがあります。どこまできっちりと運用するかは経営者の判断。ルールや締め日の指定もはっきりとしていないというケースも。現金の帳尻が合っていれば、多少のずれは問題ない…とされている企業も少なくないでしょう。

上場企業の経理

ところが、上場企業はこれと全く違います。正式なルールに基づき、毎月決められた期間にスピーディかつ正確な処理をしなくてはなりません。決算業務を例に挙げると、以下のように違いがあります。

  • 未上場:1年間で収支が合っていれば、大きくは問題にならない場合が多い。税法基準での決算書作成が多い。
  • 上場 :月次決算を正確に締めて、毎月の取締役会で承認を得る必要がある。会計基準での決算書作成。

つまり、

「年間で税法基準的に問題なければOK。月次は1か月中に締めてね」

から

「毎月1週目に正確な月次決算を提出してください」

という変化が起きるのです。

月次決算だけ見てもこのような大きな変化。加えて、会計基準の経理報告を行うには予算と実績の管理が必要です。他にも、売掛金限度額の基準、収益認識基準など新たなルールが適用されます。

あらゆる基準が変わる中でスピードと正確さを保ち、毎月の運用をしなくてはならないのです。

経理担当に求められるIPO準備とは

 

上場/未上場で、業務そのものが変化することが分かりました。では、IPO準備ではどのようなことを求められるのでしょうか。

経理実務

IPO準備期間は、上場企業と同様の経理実務が求められます。決算書、予算制度の導入、関連規程の変更など、経理業務そのものを上場企業と同基準に揃えなくてはなりません

社内との関わり・調整

同時に変化するのが、社内との関わり方です。

月初のうちに決算を速く正しく終わらせるには、経理情報をスピーディに集約するのが肝。これまでは、1か月かけて手元に届いた情報を処理していたところから、自ら必要な情報を期限内に回収できるよう働きかけるのです。そこには連携コミュニケーション、調整スキル、社員を教育する力…多くのことが求められます。

そのための仕組みを作り、連携のためにコミュニケーションを活性化させるなど、これまでとは種類の違う業務を、部署を超えて行う必要があります。

仕事の種類が大きく変わると考えよう

IPO準備では、経理的な技術の変化にスポットが当たりがち。ですがこのように、実は多岐に渡る範囲で業務に変化があります。IPO準備は壮大なプロジェクト。1,2年で経理部門を上場企業と同水準に機能するように変化させなくてはなりません。個々のメンバーが業務内容や役割を大きく変化させねば成立しないものなのです。

今のメンバーだけで大丈夫?推進人材の確保は

 

IPO準備を進めるためには、上場企業の決算書を理解し、準備期間に山積する課題を解決することができる人材が必要不可欠です。実際は、そのような人材が社内にいない場合がほとんど。新たに人材を採用する、コンサルティング会社に依頼する、外部人材を活用する。などの選択肢が考えられます。そのようにして推進役を据え、既存の経理社員と共にプロジェクトを推進するチームとするケースが多いです。

ところが近年、IPOに関連する経営課題の多様化や、人材コストの高騰を背景に、人材確保が困難を極めています。そこで需要が高まっているのが、IPO経験のある外部人材の活用です。コンサルティング会社やアウトソーシングを請け負う企業、フリーランス人材など形式は様々。推進チームの形は多様化しています。

IPOのチームづくりについての詳しい記事はコチラ!

まとめ

 

ここまで読んで、正直「大変そう」「難しそう」という感想を持った方もいるのではないでしょうか。IPO準備には大きなハードルが多数あり、決して楽なプロジェクトではありません。特に、IPOにおいて経理が果たす役割は大きいです。

ですが、だからこそIPO準備は、経理パーソンにとって大きなキャリアステップです。IPO準備は、誰でも経験できるわけではでない、貴重なもの。「IPO準備の経験人材」としてステップアップが望めるのです。

次回記事では、経理のキャリアに「IPO準備経験」がどう影響するかを解説します。

どうぞお楽しみに!

 

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この記事の著者

松村康平

代表取締役

大手監査法人で法定監査、管理業務コンサルを経験。IPO準備会社の経理課長という立場で上場準備、決算、税務、事業計画、予算管理、上場準備、MA対応、会計システム導入、ペーパレス化の推進を担当。

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